異常が普通に

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コニー・ヘデゴー
(CONNIE HEDEGAARD)
気候行動担当欧州委員会委員

昨年(2012年)の夏も、かつてない規模と過酷さの異常気象が数多く報告されました。いくつかの目玉を挙げるなら、米国では史上最も気温の高い年の記録を更新し、中欧・東欧では記録的な暑さとなり、英国では史上最も雨天の多い夏となりました。また、北インドとフィリピンは最多降雨量を記録し、米国と東アフリカは非常に厳しい干ばつに見舞われたのです。

つまり、気候変動と異常気象はもう遠い未来の話ではありません。かつては特別なことだった異常気象の話題は、今やnew normal(=新たな常態)になりつつあります。実際、異常気象はもう異常ではなくなっています。猛暑や洪水、干ばつ、山火事は、気温上昇を続ける世界の新しい現実なのです。

これは意外な事実ではないはずです。科学者たちは何年にもわたり、地球の気温が上昇するにつれ、私たちはより過酷で変わりやすく、より予測不可能な天候に対応しなければならなくなると警鐘を鳴らしていたのです。人間が引き起こした気候変動が通常の温暖化による影響を極端なものにしているという証拠は、次々と明らかになっています。

猛暑は期間も頻度も増しました。ヨーロッパの一部の地域では現在、深刻な水不足が続いていますが、一方では極度の降雨による洪水や農作物被害の増加に苦しんでいる地域もあります。すべての異常気象が必ずしも気候変動によるものではありませんが、その一部については、科学者たちは確信を強めています。

英国史上2番目に気温が高かった一昨年(2011年)の11月について考えてみましょう。研究者によると、地球の気候で生じる自然変異に比べて、気候変動によって引き起こされた可能性は60倍以上にも上るといいます。昨年の夏は通常の枠内に収まりましたが、今後は同様に暑い夏がもっと頻繁に訪れるだろうと科学者は発表しています。

アメリカ雪氷センター(NSIDC)が昨秋発表した新データによると、北極の海氷は1979年に衛星による観測が始まって以来、最も小さくなっているということです。7月に発表された多くの衛星データでは、グリーンランドを覆っている巨大な氷床の97%が溶解しつつあることが明らかになり、NASAの科学者が思わず「これは本当なのか?それともデータのエラーなのか?」と尋ねたといいます。残念ながら、データは正確でした。

これらの記録破りのニュースはいずれも、多くの気候科学者の予想よりも 早いペースで地球の気候が破綻しつつあることを明らかにするものです。
気候変動は実際に起きており、他のあらゆる地球規模の問題を悪化させ、すでに安定を失っている世界を一層不安定にしています。

とはいえ、低炭素な世界への投資はあまりに高くつくのではないかと疑問に思う人もいるかもしれません。たしかに費用はかかります。しかし、今までどおりに過ごしていても同じです。今と変わらぬ生活を送ることがコストのかからない選択肢であるという考えは間違っているでしょう。実際にそうではないのですから。それどころか、非常に高くつくのです。

一つだけ、例を挙げてみましょう。先日、米国、ロシア、ウクライナで発生した深刻な干ばつにより、食糧価格が記録的に高騰したことを受け、世界銀行は世界的に飢餓を警告しました。モザンビークやスーダンの一部の市場では、トウモロコシの価格が113%、ソルガムの価格が200%も高騰したと指摘したのです!

この種のコストは多くの場合、無視されてしまうものです。企業は、異常気象によって生じる経済的損失について説明を受ける必要がありません。

米国で昨夏発生した干ばつは、数十億ドル分のトウモロコシや大豆の収穫に打撃を与えました。米国の保険会社は、農業では最高額となる200億ドルもの損失に直面したのです。

これが必ずしも経済危機との戦いにおいて役立つとは言えません。将来の世代のために、一部の人々が負う覚悟をしているリスクがどれだけ大きなものかは、とても信じられるものではありません。

目の前に事実と証拠があるにもかかわらず、何もしないとか、今までどおりの生活を送るとか、あるいは経済危機が解決するまで気候の危機のことは忘れてしまおうと主張する人々もいまだに多いのです。一部の人々は、現在の金融不安は国際社会の気候保護の妨げになると見ています。

しかし私は、賢明な気候行動は、ヨーロッパにおける雇用創出や、エネルギー効率化技術への投資、技術革新と競争力の促進、光熱費削減のための新たな機会を生み出すと思います。私にとって気候の危機は、経済の安定と繁栄を阻むのではなく、助けるものです。気候の危機も経済危機も関連し合っており、同時に取り組まなければなりません。

世界各国の大臣や交渉担当者が国連気候変動会議のためカタールに集まり、国際社会の気候変動との戦いをどう進めていくかは、正念場を迎えます。何もしないということは許されません。

2009年のコペンハーゲン会議で首脳たちは、気温上昇を極めて重要な数値である摂氏2度以内に抑えることを公約しました。その本気を示す時が来たのです。

 

出典:Our Planet 2013 Vol.1(通巻30号)