相違をなくす

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クリスティアナ・フィゲレス
(CHRISTIANA FIGUERES)
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長

20年前、気候変動は環境への危険な脅威となる兆しを見せ始めていました。それが今では、人口増加、エネルギー不安、水と食料やその他の資源に対する諸問題など、人間が直面しているあらゆる重大な危機をさらに増幅・拡大させるものだと認識されるようになりました。

この20年間で、まとまりがなく鈍かった国際社会の対応は、国際機関、各国政府、企業の政策や戦略がますます相互に強化し合い、唯一の長期的解決策である低炭素な未来を目指す形にまとまりつつあります。

ここ数年の間に、国連の気候変動交渉に臨んでいる各国政府は、数多くの気候変動問題に対応するための包括的な道筋をつけてきました。地球の平均気温の上昇を摂氏2度以内に抑える必要があることに合意し、低炭素な未来に向けて舵を切ったのです。

先進国と途上国が公約した温室効果ガス排出の削減量と制限量は過去最高となりましたが、科学者が順調に摂氏2度以内に抑えるために必要だとする量に比べると、まだ40%ほど不足しています。

各国政府がこれまでに、排出量削減から適応まで、目標として掲げた数値の差に取り組む対応策を策定し、途上国が持続可能でクリーンなエネルギーの未来を築けるよう支援する、新たな世界的インフラを立ち上げようとしているのは、まさにそのためなのです。

ドーハで開催される国連気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)も、そのための重要な一歩となるでしょう。開催地のドーハはまさにこの時期に、気候変動の解決策は、単に大きな危険を回避するだけでなく、すべての人にとって真に持続可能な未来を実現する絶好の機会を与えてくれるということを、あらためて認識させてくれる場所です。

中東では、気温上昇が持続可能性のあらゆる側面に破壊的な影響を及ぼす可能性があり、これほど気候変動の危機に脅かされている地域は数えるほどしかありません。しかし同時に、中東は膨大な再生可能エネルギーの可能性を秘めており、この地域の国々が策定している戦略計画にいくつかの抜本的な変化が見られるのは心強いことです。

たとえば、サウジアラビアは将来の国内のエネルギーを100%再生可能エネルギーでまかなうことを検討しており、カタールは自国の太陽エネルギーの利用能力を高め、太陽電池を増産する計画に取り組んでいます。

これらの計画も実施しなければなりませんが、今、まったく新しい動きが現れつつあります。世界規模で、各国や地域、都市、企業が低炭素技術への投資を真剣に始めているのです。

2011年末までに1兆ドルが再生可能エネルギーに投資されました。昨年(2012年)末までに、118カ国もの政府が再生可能エネルギーに関する目標や政策を策定しました。わずか8年前の2倍以上にもなったのです。

気候をさらに安定化させるためには、相互に強化し合うようなトップダウンの取り組みとボトムアップの行動の組み合わせを促進していかなければなりません。つまり、その進展を妨げる可能性がある現在のギャップを埋めるのです。

このことに気づいた各国政府は昨年、国際的な気候変動対策における3つの重要なギャップを埋めるための目標を設定しました。

第一に、京都議定書の第一約束期間と第二約束期間とでは、規制に違いがあります。各国が途切れることなく議定書を継続できるよう、また先進国が排出量削減に向けた国際的取り組みの先頭に立つべきであるという基本原則を守れるよう、この相違をなくす必要があります。京都議定書は現在、世界で唯一の拘束力のある気候変動協定ですが、ドーハ会議で採択される予定の改正案でも、会計や実施に関する重要な要素はそのまま保たれるでしょう。

第二に、2012年から2020年までの途上国への資金援助に関する考え方に相違があります。ドーハ会議の開催中に交渉段階を終結させる作業の一環として、2020年までに長期資金援助を年間1,000億米ドルに引き上げる方法について、各国共通の理解がなければなりません。

ドーハ会議で取り組まなければならない第三の相違点は、2020年まで、およびそれ以降の温室効果ガス排出の抑制に対する各国政府の意欲に差があることです。各国政府は一昨年、すべての排出国を対象とした世界的な気候協定を2015年までに採択し、2020年から発効することに合意しました。この新たなダーバン・プラットフォームの交渉に基づく作業の開始で弾みをつけ、その進展をさらに持続していくことができます。同時に各国政府は、気温上昇を摂氏2度以内に抑えるため、2020年までに全体の削減意欲をいかに高めるかという点で、さらに理解を深める必要があります。

気候変動交渉のプロセスでもまた、グリーン気候基金、技術メカニズム、適応委員会など、貧しく無防備な人々に対する資金や技術、その他の支援を得るためのまったく新しい国際機関を立ち上げようとしています。これらの機関が協力して活動すれば、私たちがすでに持ち合わせている貧困撲滅や開発に関する専門的知識や技術を生かし、協調的取り組みを新たなステージに乗せる絶好のチャンスを国連にもたらすことができるのです。

とりわけUNEPは、国際社会の気候変動への取り組みが進展するよう、積極的に支援を行ってくれています。気候変動による影響についてのUNEPの定期的な調査研究は、重要なメッセージを与えてきました。

技術や政策ツールを通じた解決策とその実施時期に関する詳細な分析は、討議の重要な基盤となっています。社会のあらゆるレベルで、変革への勢いが増大しつつあります。そのことをさらに証明するため、UNFCCC事務局はドーハで「灯台の活動(Lighthouse Activities)」を紹介しています。

これらは、途上国における官民による気候変動イニシアティブの典型的な例で、すでに都市部の貧困層の生活を改善しており、政府にも企業にもさらなる活動を促すことになるでしょう。

もしあなたがドーハにいて、この記事を読んでいるなら、ぜひ参加してください。時間は貴重ですが、力を合わせれば、きっとやり遂げることができるのですから。

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出典:Our Planet 2013 Vol.1(通巻30号)