希望はエバーグリーン

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デニス・ギャリティ
(DENNIS GARRITY)
世界アグロフォレストリーセンター所長

アフリカは、食糧生産量を劇的に増やす必要があります。その上で、持続可能かつ経済的に手頃で、生物多様性を脅かさない方法をとらなければなりません。

アフリカ住民の約30%を占める人々――約2億1,800万人――がすでに日々の飢えに苦しみ、人口は2005年の約7億9,600万人から2050年までに18億人に増える見込みです。しかし、1人当たりの食糧生産は低下し、穀物収穫高は1960年代から停滞したままです。同時に、土地所有の規模は縮小を続け、現在ではアフリカ大陸の農地のうち5分の4が2ヘクタールに満たない状態です。農業者らが土の乏しい小規模農地の収穫増を試みる一方で気候の変動性は増し、長期的な気候変動が先にひかえています。

多くの場合、食糧生産量を増やす上での彼らの唯一の希望は、森林伐採による耕地拡大です。これは生物多様性保全に対し大きな課題を投げかけることになります。

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極度の貧困と闘いつつ森林伐採を防ぐ形で農業を発展させる唯一の方法は、その地域の最善の知識や習慣に基づいた――また真に利用可能で経済的にも手頃な――科学的根拠のある解決策です。ザンビア、マラウイ、ニジェール、ブルキナファソの数十万もの小自作農が、枯渇した土を元の状態に戻し収穫高と収入をともに激増させる農業システムへと移行しました。彼らはエバーグリーン農業の原則を応用しています。

エバーグリーン農業は収穫を増やすのみならず、農地に木を増やし森林損失を防ぐ上でも多大な可能性を秘めた手法として台頭しており、広い意味では木々を年間の食糧収穫や被覆作物と一体化させる保全農業として定義づけられます。

保全農業はすでに地球全体で1億ヘクタール分の土地で実施され、次の3つの基本原則を伴います。可能な限り土壌を害さない(耕作を最小限またはゼロにとどめる)、作物残渣のような有機物で土を覆う、特に土の栄養素を補充するマメ科の種を使った作物の循環・多様化、です。エバーグリーン農業では、木を農業システムに含める――混農林業として知られる――手法が上記の各原則に加わります。

土を健康にして作物生産を高めるグリーン肥料や果物、薬物、家畜の飼い葉、木材、薪など、木は農業者にも環境にも多くの利益をもたらします。さらに木はシェルターとなり、浸食を抑え、生物多様性を高め、気候変動に対する回復力を高める一方で炭素を貯留します。肥料木――空気から窒素を取り込み、根や落ち葉を通して土に変換する――は、トウモロコシの平均収穫高を2倍以上に増やせることが証明されています。これは平均的アフリカ人のトウモロコシの1日消費量を1.5kgと仮定した場合、6人家族の3~4ヵ月分に相当します。

ある特殊な肥料木――ファイドヘルビア・アルビダはアフリカ固有のアカシアで、アフリカ大陸の多くの地域にわたって農業システムの自然成分としてすでに使われている――は、未来のエバーグリーン農業の基礎となる可能性を秘めています。この肥料木は“逆の樹木フェノロジー”を呈します。これは窒素に富んだその葉を雨季の初めに落とし、作物の成長期を通じて休眠期に入ることを意味します。乾季が始まると再び葉が育ちます。これによって食用作物との両立性が高まります。なぜなら、成長期に光や栄養素、あるいは水をめぐって食用作物と競うことがないからです。食用作物が成熟していく間、ファイドヘルビアの裸の枝だけが作物の頭上に広がります。

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マラウイでは、ファイドヘルビアの木に覆われて育ったトウモロコシの収穫高が最大280%増加しました。ザンビアとマラウイでは、10万人を超える農業者が自らの保全農業にファイドヘルビアの混農林内での食用作物栽培を取り入れるところまで拡大しています。ファイドヘルビアの木の近くで育てられたトウモロコシは生産性がはるかに高く、土の健康度も増すことが、広範囲にわたる観察から示されています。そしてニジェールでは、ファイドヘルビアが主体となった混農林が現在約480万ヘクタールあり、雑穀やモロコシの生産を促進しています。エバーグリーン農業は、土地を大切にして小自作農の食糧生産を増やすための、科学的根拠のある経済的に手頃で利用可能な方法を提供します。

これによって私たちは環境にやさしい農業の未来を垣間見ることができ、年間の食用作物の多くが完全林冠の森林において生産されます。農業のための森林開墾のほとんどは、生産や収入増、そして貧困からの脱出をめざす零細農業者によって行われています。

農村の人口密度が上昇を続ければ、天然の森林――そしてそれがもたらすサービス――への脅威も増大します。エバーグリーン農業を幅広く採用することで、小自作農にとっては自らの農地の生産性を改善する機会となり、農地拡大の必要性を軽減するとともに、手つかずの天然森林をより多く残せる可能性があります。

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混農林業の拡大はまた、農場に森林関連商品やサービス生産の可能性をもたらすとともに、生物多様性をさらに保護します。小自作農が炭素市場を利用できるようになれば、かつてない数の木々が農村風景に含まれることになります。このようなエバーグリーン農業やファイドヘルビアの利用は、すでに提案されているアフリカ全土への拡張の基盤となります。農業運営に対するこの革新的なアプロ-チの拡大に取り組む政府、世界のドナー、研究機関、国際および地域の開発パートナーによる、広い協力関係がアフリカ全土に生まれつつあります。

 

Our Planet日本語版 2010 Vol.3(通巻20号)