ペーター・アルトマイヤー
(PETER ALTMAIER)
ドイツ環境・自然保護・原子力安全相
わずか数年前、気候変動という考えには公の場で幾度となく疑問が投げかけられていましたが、今では疑い深かった人々の足元は揺らいでいます。上昇し続ける地球の気温、頻度を増す異常気象と人々への危険な影響、どんどん進む種の絶滅――これらの影響やその他のいくつもの影響は、破滅的な結果をもたらし、地球温暖化が実際に起きていることを厳粛に立証しているのです。
先進国の政府は、協力なしではこれらの影響に立ち向かうことはできないと知っています。今や二酸化炭素排出率の増加が最も著しい途上国は、先進国が工業化の過程で頻繁に起こした過ちを避け、最初から低炭素経済を構築するべきです。このような状況では、気候変動に関する国際交渉で気候ファイナンスが重要な役割を果たすでしょう。
先進国は2009年にコペンハーゲンで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)において、途上国や工業化が進んでいる国の気候変動対策に対し、2020年から年間1,000億米ドルに上る大規模な資金提供を行うことを公約しました。
その間、ドイツは2010年から2012年まで、緩和と適応とREDD+(森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減)に対し、迅速に軌道に乗せるためのファストスタート資金として12億6,000万ユーロを提供します。
2011年にダーバンで開催された締約国会議を受け、昨年(2012年)始動したグリーン気候基金(GCF)のおもな任務は、途上国において低排出経済に向けたパラダイムシフトを促進・構築することです。
理事会の一員であるドイツは、GCFを積極的に支援し、一刻も早く効果的に運営できるよう最善を尽くしています。被援助国において真のパラダイムシフトを導き、気候変動への取り組みに成功するためには、いくつかのことが必要です。
たとえば、基金を確実に組織的かつ効率的に利用するための能力開発機関、GCFの資金調達への直接アクセス、民間部門の参加による資源の動員・有効利用などが挙げられます。ほとんどの国では、必要な機関と体制がまだ存在しないか不十分で、基金を有効に利用するための経験も足りません。
GCFによる認証評価にまだ国家実施機関(NIE)を推薦していない国も多数あります。被援助国が資金調達への直接アクセスを確保し、民間部門の関与を促すためには、包括的な準備措置が必要です。
そのねらいは、これらの国々とその公共機関がGCFから財源を調達・運用して、最大限に活用し、然るべき監視システムを構築できるよう支援することです。同時に、 国内外の関係者、すなわち政府、企業、市民社会の間に、建設的な協力関係と効果的な意思決定が不可欠です。この複雑なプロセスから有益な教訓を得るためには、専門的知識を活用することも求められます。
GCFの運営準備のため、ダーバン会議においてドイツは4,000万ユーロの支援を公約しました。被援助国の需要に応じて、半額は環境・自然保護省に、残りの半額は経済協力・開発省に割り当てられます。
実施団体である国連環境計画(UNEP)、国連開発計画(UNDP)、ドイツ国際協力公社(GIZ)、ドイツ復興金融公庫(KfW)、世界資源研究所(WRI)には、4つの主要な課題があります。
1.直接アクセス:
途上国政府が推薦した国家実施機関の認証プロセスを組織的に支援し、監視する。
2.戦略立案の支援:
部門別および部門 横断的な政策アプローチと密接に関連した、緩和・適応策のための国家戦略の策定を支援する。
3.プロジェクトのルート開拓:
民間部門の参加を促すことに特に重点を置き、主要部門における助言サービスや能力開発といった国内のGCFのプロジェクトルートを確立する。
4.グローバルな経験の交換:
方法論やベストプラクティスに関する経験を交換するなど、GCFの準備に関する知識を活用する。
実施に際しては、国連が重要かつ責任ある役割を果たすことになります。2013年1月には、UNEPとUNDPが共同で運営する「GCF投資準備プログラム」が一部の途上国と工業化が進んでいる国において発足します。このプログラムは、国家実施機関における分析、教育、能力開発に重点を置くものです。
第一の目標は、被援助国の基金への直接アクセスを実現することです。そしてまた、途上国における、緩和と適応のための国家投資プログラム・戦略の立案を支援することも目指しています。すべての経験と結果を、明確に伝えなければなりません。そのため、基金の将来の活動に指針を与え、プログラムや対策の成功を強調することが可能です。
ドイツは、途上国における効果的な気候行動に緊急に必要とされる支援を提供するよう他の国々に呼びかけ、グリーン気候基金の担う極めて重要な役割への関心を促すことに尽力したいと考えています。私たちの気候変動との戦いは、協力なしでは成功しません。ですから、効果的かつ適切な気候変動対策の促進・導入と同時に、より多くの援助国がイニシアティブに参加するよう説得し、国際協力を強化することも将来の目標となるでしょう。これにより、国際社会の気候行動への取り組みが最大限に活かされるのです。
中期的には、気候ファイナンスの分野における国際透明度に取り組むことも必要です。現在、60を超えるさまざまな国際気候基金が存在し、多くの被援助国は久しく融資状況に関する情報から注意が逸れてしまっています。一方、援助国は、さまざまな政府や組織が被援助国においてすでに実施している気候変動に関するプロジェクトを、より明確に見渡すことが必要です。これは、プロジェクトの重複を避け、相乗効果を最大限に利用するためです。ゆえに、援助国の活動を、被援助国の需要と進行中のプロジェクトと比較することが、将来の重要な課題となるでしょう。
これらすべてのことが、一刻も早くグリーン気候基金の活動を開始するということの重要性を示しています。ドイツは、可能な限りの支援を提供するつもりです。
出典:Our Planet 2013 Vol.1(通巻30号)