最近の報告によると、大気中のCO2濃度の上昇は、世界の海洋生物の生態系を脅かし、多様な海の生き物にとって住みにくいか、もはや生存できないような状況にしつつあります。私たちは、これに対してどのようなことができるでしょうか?
地球上の生命は海から始まりました。 それから何十億年もの間、海は世界最大の哺乳類からサンゴ礁を構成す様々な生物にいたるまで、数え切れないほどの種を維持してきました。
しかし、産業革命以来、地球の表面の3分の2以上を覆う水は、生き物に対し、ますます脅威を及ぼすものとなっています。
行きすぎた漁獲、プラスチック汚染、暖められた水はすべて、海洋生物が生き延びるのをより困難にします。
しかし今、おそらく彼らにとって最大の脅威は、私たちが大気中に排出する炭素が及ぼす最もおぞましい影響の一つである海洋の酸性化でしょう。
ドイツのキールで海洋リサーチを行う、GEOMARセンターのUlf Riebesell氏は、海は排出された二酸化炭素量の最大4分の1を吸収すると解説しています。
そして「CO2は海水と反応して炭酸を生成するので、海洋がより多くのCO2を吸収すればするほど、海は酸性化する」と語っています。
だから彼によれば、海洋の酸性化は地球温暖化の「邪悪な兄弟」なのです。なぜなら2つは密接につながっているからです。
大気が海水と反応する時、そのCO2レベルが正常なら何も問題は生じません。しかし、世界気象機関(WMO)によると、大気中のCO2濃度はここのところしばらく異常値を示し、2016年には過去最高を記録しました。それが海洋酸性レベルも生物にとって危険なものにしたのです。
Riebesell氏は、海洋の酸性化が継続し、海洋はいわゆる緩和能力を失います。すると吸収できるCO2が少なくなり、大気中により多くのCO2が残され、地球温暖化が加速するのですと説明しています。
健康な海水の平均pHは8.2ですが、 産業革命以降は8.1に低下しました。この数値はあまり大きな変化には見えないかもしれませんが、産業革命前より26%も低くなっています。
生態系全体が、この変化に影響されます。
良い例が、石灰化生物です。彼らはカルシウムで殻を作る際、海中のPhが低くなればなるほど、よりエネルギーを使わなくてはなりません。なぜなら、カルシウムは酸に溶けるからです。
サンゴ、甲殻類、軟体動物(ハマグリ、海カタツムリ、イガイなど)、ある種のプランクトンなどの石灰化生物は、海水が酸性になれば骨格を作るため悪戦苦闘しなければなりません。
そして、これらの種に対する脅威は、彼らを食料や避難所として依存している生物に連鎖的な影響をもたらすのです。
すでにアメリカのオレゴン州の沖合に生息する牡蠣が影響を受けており、現地の牡蠣産業は脅威にさらされています。魚類も同様です。
そして冷たい海水は暖かい海水よりCO2を吸収しやすいため、極地の海はさらに酸性化が進むことになります。専門家が北極タラの幼魚を使ってテストしたところ、今より緩やかにCO2濃度を増加させても、その個体数は半分になってしまうことがわかりました。
最新の調査では、現在の酸性化速度は、過去5,500万年の間のどの時点よりも10倍以上速いことが判明しています。この速度は、多くの種がこれによる環境の変化に適応できないことを意味します。
BIOACIDリポートに関わる科学者たちは、さらなる海洋酸性化を食い止める唯一の方法は、CO2排出量を大幅に削減することだと警告しています。しかし、地球温暖化を摂氏2度(華氏3.6度)以下に維持するというパリ協定のゴールに沿って世界が排出量を削減しても、それ以上の酸性化を抑制するには十分ではないかもしれません。