地球を暖めずに涼しく保つには

昨年の大気のCO2濃度の上昇は、これまでにない速さを記録し、300万年以上の間で最も速いものとなりました。科学的にみても、各国政府が誓約した対策だけでは、地球温暖化の危機を防ぐことができないことは明らかです。

幸いにも、さまざまな解決策があります。エネルギー効率が良く、気候にやさしい冷蔵庫や空調機を普及させ、既存のものを持続的にそれらにシフトさせることなどです。これは行政が採用できる、最も不可欠でコストパフォーマンスの高い解決策の一つです。
世界規模でこのような冷蔵庫、エアコンにシフトすれば、私たちは地球に対する影響を小さくしながら、それらの機能を楽しむことができます。

今や人口の拡大と経済の成長に伴い、開発途上国や新興国では、冷却用電化製品の消費者需要が急速に高まっています。
2030年までに世界全体の空調機の在庫は、現在の6億6,000万台から15億台以上に増加することが予想され、同様に冷蔵庫の在庫は現在の10億台から20億台に倍増すると考えられています。

空調機は気温が高く、湿気の多い気候の下で生活する人々の健康、生産性、生活の質を改善します。
冷蔵庫は、食品や医薬品を保存するのに役立ち、通常、電気が利用可能になると最初に購入される電気製品の一つです。そして冷蔵庫は、間接的な気候変動の原因となる食糧廃棄物を削減するという意味でも、大変貴重です。

問題は、これら冷却用電化製品は私たちの生活を涼しく快適にし、食料保存に役立つ一方、地球を暖めるということです。これらの気候に対する影響は、間接的には、化石燃料を発電所で燃焼させて発電する時、そして直接的には、機器の内部で使用されるガスが漏れた場合です。

ほとんどの先進国は、冷蔵庫や空調機のエネルギーおよび気候への影響を緩和するための規制を行っていますが、多くの開発途上国と新興国はそうではなく、残念なことに時代遅れの技術が今も一般的であり、世界中で多くの電力が浪費されています。

もし、エネルギー効率が良く、気候にやさしい空調機や冷蔵庫にシフトすれば、開発途上国と新興国は2030年までにCO2排出量を5億7,000万トン削減することができます。これは従来の空調機が年間必要とする電力よりも30%、冷蔵庫は60%も削減することになります。

例えば南アフリカでは、この政策を実施することで、2030年までに年間2メガトンのCO2排出量を削減することができます。これは100万台の自家用車を道路から取り除くことに相当します。

政府は、製造メーカーがこのようなエネルギー効率が良く、気候への影響が少ない電化製品を生産するよう、支援するべきです。この問題により万全に対処することは、行政にも企業にも大きなメリットがあるのですから。

今、国連環境計画は、先端企業及び専門機関とパートナッシップを組み、そのUnited for Efficiency(U4E) 構想を通じてアフリカ、アジア、中南米の30以上の国々の政府を支援し、このような政策の発展と実施を促しています。

――エリック・ソルハイムUN Environment事務局長

How to keep cool without heating up the planet