エルハム・マフムード・アハメド・イブラヒム
(ELHAM MAHMOUD AHMED IBRAHIM)
アフリカ連合委員会インフラ・エネルギー担当コミッショナー
エネルギーは開発の中心であり、その供給はミレニアム開発目標(MDGs)達成の必須条件です。実際に、エネルギー需要を満たすことが21世紀の主要な課題のひとつとなっています。
私たちアフリカ人は、世界中から支援を受け、国連による「Sustainable Energy for All(=すべての人に持続可能なエネルギーを)」イニシアティブの目標を実現すべく努力しなければなりません。そして、2030年までにすべての人が近代的エネルギーサービスを利用できるようにし、世界全体のエネルギー効率の改善率と、世界のエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合を、いずれも2倍にする必要があります。
実のところ、ユニバーサルアクセスは国際社会が最優先で取り組むべき目標なのです。
世界の途上国に暮らす人々のうち、28%は電力を利用することができません。サハラ砂漠以南のアフリカでは、その割合はおよそ70%に上ります。電力の利用率が50%を超える国は、アフリカにはわずか9カ国しかありません。
アフリカは豊富なエネルギー資源に恵まれています。たとえば、原油や天然ガス、石炭、原子力、タールサンド、水力発電、地熱、バイオマス、太陽光、風力、その他の再生可能エネルギーなどです。しかし、その利用は非常に限られています。このことがかえって、アフリカ大陸の社会経済的発展を抑えてしまっているのです。
アフリカ連合が2000年から提唱している「African Energy Vision and Objectives(=アフリカのエネルギービジョンと目標)」は、アフリカ大陸が物理的に統合するための効率的かつ確実でコスト効率に優れ、環境に配慮したインフラを整備すること、またアフリカに暮らす人々の大多数が近代的エネルギーサービスを利用できるよう促進することを目指すものです。
その主要な目標と政策イニシアティブとしては、たとえば、経済と社会の発展のためのエネルギー安定供給の確保、 域内および大陸内のエネルギー取引の拡大によるエネルギー統合の実現、アフリカの住民の基本的なエネルギーサービスの利用機会を改善するためのエネルギーコストの削減、直接投資に好意的な環境の醸成、温室効果ガス排出量の削減と気候変動問題への取り組みなどが挙げられます。
現地ではさまざまな政策が展開されているにもかかわらず、資金集めや地域統合への支援という点では、アフリカ各地におけるエネルギー投資はうまく機能していません。同地域のプロジェクトに経済的魅力がありながら、資金集めや地域市場の開拓においてはあまり成果が出ていないという矛盾こそ、アフリカ大陸とその地域で活動する適切な権限を有する機関が取り組むべき最大の課題です。
今や、商業的に実現可能な形で地域の投資を構築するための革新的な対策が必要なのです。
第12回国家元首・政府首脳会議はアフリカ連合委員会(AUC)に対し、エネルギーとすべてのインフラの課題に取り組むため、「アフリカ・インフラ開発プログラム(PIDA)」の策定を求めました。2010年に立ち上げられたPIDAは、新たな分析と洞察を提供し、アフリカ大陸の現行あるいは過去のインフラ政策をひとつの一貫したプログラムに統合しています。過去の教訓に基づいてギャップを埋め、地元の所有権の価値や、ハード・ソフト両面での介入の必要性、多様な資金調達の必要性に、然るべき重要性を持たせるのです。
このプログラムは 2012年1月のアフリカ連合サミットで採択され、現在施行されています。このプログラムにより、エネルギー、輸送、越境水については2040年まで、情報通信技術については2020年までの、インフラ需要に関するマクロ的展望が示されました。この展望は、2040年までの長期的な需要を満たすことを視野に入れたうえで、2020年および2030年の短中期的な期間についてまとめられたものです。
アフリカにおいてインフラ整備の必要性が差し迫っていることを考慮して、PIDAには短期間で実行すべきプロジェクトやプログラムのための優先行動計画(PAP)も含まれています。これは、2012年から2020年までの間に完全な地域統合を促進するための実行可能なプロジェクトやプログラムを提示し、迅速な方法について詳細に述べたものです。51件のうち15件がエネルギー分野におけるプロジェクトです。
現時点で、PIDAを2040年まで長期的に実施するための資本コストは3,600億ドルと推定されています。
2012年から2020年までPAPを実施した場合の総資本コストは約680億ドル(年間約75億ドル)となる見込みで、このうち403億ドルがエネルギー関連のプロジェクトに充てられます。PAPのすべてのプロジェクトとプログラムには、必要な投資条件を公開するためのソフト面の方策も含まれます。2020年に必要な資本投資はアフリカのGDPの1%をはるかに下回る額です。
また、ほとんど資本金を必要としない計画もありますが、政治的意思と行動する意欲は必要なのです。従来どおりのシナリオの場合、PAPのインフラ財源は楽観的に見て、2020年まででおよそ300億ドルと考えられていました。しかし実際には、680億ドルが必要です。各国は、国内の公的資源および民間資源を動員し、外国の民間投資を誘致して、明確な法規制に基づいた競争市場を確立しなければならないでしょう。
そしてアフリカ諸国は、より多くの民間資金を集めるだけでなく、インフラ債や融資保証、共同体税などの新しい革新的な財源を採用するべきです。アフリカ連合委員会には、持続可能な開発とエネルギー資源の有効利用に向けた地域間および大陸間の協力を強化する義務があります。
同委員会による、アフリカの人々のためのエネルギーの利用と安定供給を促進するプログラムには、以下のようなものがあります。
・アフリカ・EUエネルギーパートナーシップは、再生可能エネルギー協力計画の枠内で、2020年までに少なくともさらに1億人のアフリカ人が、持続可能な近代的エネルギーサービスを利用できるようにすることを目指している。
・ハイドロパワー2020イニシアティブでは、アフリカの主要河川流域が持つ水力発電能力の開発・利用を促進している。
・地域地熱プログラムの目的は、東アフリカ地溝帯を有する国々に眠る莫大な地熱資源の開発を促進することである。これまでに、ドイツ政府およびEUインフラ信託基金との協力により、5,000万ユーロの「リスク軽減ファシリティ」が開設され、掘削作業に従事する地熱プロジェクトの開発者たちを支援している。
持続可能な貧困削減に向けた進展とエネルギー利用の改善を促進するには、土地劣化、森林減少、砂漠化、地球温暖化といった環境への悪影響にも同時に取り組む必要があります。
温室効果ガス排出量が世界で最も少ないアフリカは、気候変動の影響を非常に受けやすいため、エネルギー貧困削減のための戦略は環境に配慮したものでなければなりません。そして、アフリカ大陸も気候変動資金に正当な形で参画するべきです。
アフリカは開かれています。そして、関係するすべてのパートナーとのwin-winな形での協力と投資を歓迎しています。
出典:Our Planet 2013 Vol.1(通巻30号)