小池百合子
世界の中で最も都市化された国のひとつである日本が、廃棄物や気候の変動にどのように取り組んでいるかを述べる。
今日の環境問題の多くは、通常の経済活動や家庭における日常生活など、私たちが前提としてきた社会経済の在り方そのものに起因しています。
これをしっかりと踏まえた上で、これまでの経済活動やライフスタイルの在り方を根本から見直し、環境保全の知恵を結集して積極的に取り組んでいくことが、環境と経済の統合による持続可能な社会の構築につながっていくものと考えます。
以上の基本的な考えに基づき、社会経済の大転換を実現するため、日本では、「脱温暖化社会の構築」と「循環型社会の構築」を二本柱として、施策を推進します。
本年2月に日本を訪問した、ノーベル平和賞受賞者でケニアの環境副大臣であるワンガリ・マータイさんは、日本の古来からものを大切にする心「Mottai Nai(もったいない)」を高く評価しました。
彼女は「Mottai Nai」精神こそ、全世界が必要としているとし、「Tsunami(津波)」同様、日本語起源の国際語として広めようと努力されています。
ガイドラインを通して
わが国は、この「Mottai Nai」精神で、3R──廃棄物の発生抑制(Reduce リデュース)、再使用( Reuse リユ ース )、再生利 用(Recycle リサイクル)──による「循環型社会の構築」を加速してまいります。
それはゴミゼロ社会の実現を目指し、廃棄物などの発生抑制と適正な循環利用を、総合的かつ計画的に進めることです。
このため、廃棄物処理の有料化や分別収集に関するガイドラインの作成などを通じて、一般廃棄物の減量化やリサイクルを推進します。
われわれは、新たに循環型社会形成推進交付金を創設し、廃棄物処理・リサイクル施設や浄化槽の効率的・効果的な整備を推進します。
また容器包装リサイクル法の見直しの検討を進めたり、さらに大規模な不法投棄や廃棄物の不適正な輸出などへの対応を強化し、より適切な体制を確立するため、廃棄物処理法などの改正案を今国会に提出いたします。
いわゆる3Rの推進は、国際的にも重要な課題となっています。
昨年(2004年)6月のG8シーアイランド・サミットで小泉総理が提唱した「3Rイニシアティブ」を正式に立ち上げるべく、本年4月には、我が国で3Rイニシアティブ閣僚会合を開催しました。
この会合を契機として、世界に3Rの取り組みを広げていきたいと考えております。
環境問題
昨年は、日本でも、夏の記録的な猛暑に加えて、数多くの強大な台風が上陸し、多くの人命を奪うなど激甚な被害をもたらしました。
このような中で、市民の誰もが、気候の変動や異変を直接肌で感じ取り、関心を高めているのではないかと思います。
地球温暖化の進行により、異常気象が頻発し、その規模も大きくなることが予測されています。
今こそ、この関心の高まりを契機として、私たち一人一人が、気候の変動などの環境問題を自らの問題として再認識することが重要です。
2005年2月16日に京都議定書が発効し、国際社会は、地球温暖化防止に向けて新たな一歩を踏み出すことになりました。
わが国は、地球温暖化防止京都会議の議長国として、議定書の6%削減約束を果たすことはもとより、技術の開発・普及などの中長期的な視点に立った施策を推進し、他国に先んじて脱温暖化社会づくりを進めることが重要であると考えます。
このため日本政府は、議定書の約束を確実に達成するための対策・施策などを盛り込んだ京都議定書目標達成計画を策定いたします。
また、①地域における再生可能エネルギーの集中導入の支援、温暖化対策に関する先端技術の開発と新しいビジネスの創出、②自主参加型の国内排出量取引制度の創設、そして③国民運動を大規模に展開するための集中的なキャンペーンの実施などに取り組みます。
さらに、事業者からの温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度を導入するため、地球温暖化対策推進法の改定案を進めます。
前向きな取り組み
日本政府は、環境税については有力な追加的施策であると考え、昨年、環境省から具体案を公表しています。
今後は京都議定書目標達成計画に掲げる対策・施策の実効性を確保する観点から、環境税について早急に検討を進めます。
国際的にも、京都議定書以後の将来約束についての交渉が本年から開始されます。
すべての国が参加する共通ルールの構築に向け、各国との政策対話を進めるなど、積極的に貢献してまいります。
「脱温暖化社会の構築」と「循環型社会の構築」を推進するにあたっては、技術革新や国民一人一人の意識改革など、経済活動とりわけ、6月の「環境月間」を中心とした広報活動の積極的な展開を通じて、
あらゆる主体が環境問題に高い関心を抱き、問題意識を共有して環境保全の取り組みをともに進めていくことができるよう、努めてまいります。
21世紀が「環境の世紀」となり、持続可能な社会への変革を実現できるかどうかは、現在の私たちがどのように生きるかにかかっています。
その分岐点に立つ私たちは、目先の利益を追うだけでなく、将来の地球のために何をなすべきか考え、ためらわずに取り組んでいく責任があります。
環境を良くするための取り組みが適切に評価され、私たち一人一人が地球を守る担い手であることを実感できるような環境の国づくりを目指して、これからも全力で取り組んでまいります。
Yuriko Koike:日本の環境大臣
出典:Our Planet 2005.Vol.1