今年(2015年)は、持続可能な開発目標(SDGs)が国家、地域、世界レベルで合意され、真の変革を起こす機会となります。私たちが望む未来を築くために、私たちは何を為すべきであり、また何ができるでしょうか?
目標と戦略が具体的な結果を伴って明確かつ有意義に定義されると、ほとんどの国が大幅に進歩したことを、開発の経験が示しています。
2014年6月に開催された第1回国連環境総会(UNEA)には、159の国連加盟国の110名の大臣と、主要団体やステークホルダーを含む1,200名以上が参加しました。国連環境計画(UNEP)管理理事会の会合では過去最多の出席者数でした。
この総会は、持続可能な消費・生産(SCP)、環境に関する法の支配、違法な野生生物取引などのSDGsとポスト2015年アジェンダの重大な議題に関して、各国政府や主要ステークホルダーが互いに議論し、対話をするための重要な場となりました。
各国の環境大臣や主要団体の代表が成功事例を披露し、国内でグリーンなディーセント・ワーク(=働きがいのある人間らしい仕事)を創出することで環境保護と経済成長を達成し、人々の健康と食糧の確保を促進した、多くの説得力ある例を共有しました。
私たちの経済を変革することは可能です。解決策は手の届くところにあります。それには、ベストプラクティスを拡大し、再現する必要があります。
UNEAの最後の2日間のハイレベルセグメントでは、「SCPを含むSDGsとポスト2015年開発アジェンダ」に焦点が当てられました。
出席者は、「貧困の撲滅、環境保護、自然と調和した包括的な社会経済開発の促進を目的とする包括的で行動志向型の持続可能な開発目標を含む、首尾一貫した総体的・包括的かつバランスのとれた形で持続可能な開発の経済、社会、環境の側面を完全に統合する、意欲的・普遍的で実行と実現が可能なポスト2015年開発アジェ ンダ」を構築するというビジョンを共有しました。
今世紀の終わりまでに、世界の人口は110億人に達すると推定されます。
もし今の消費パターンが続き、食糧、エネルギー、水の需要が増え続ければ、地球が与えてくれる量をはるかに超えた資源が必要になるでしょう。
人類は歴史から学ばなければなりません。そして、経済と社会が地球の限界の範囲内で持続可能な成長を遂げつつ、公平性と人間の安寧を実現できるような、持続可能な消費・生産への移行に対して、より責任を持ち、主体的にならなければなりません。
人間の安寧は多くの生態系の機能とサービスに依存しています。
食糧、水、エネルギー、原材料の持続可能な供給、そして自然災害や病気、害虫、気候の制御は、いずれも地球システムのさまざまな構成要素の機能とそれらの相互作用に頼っています。
地球環境の変化は、開発が地球環境に深刻な影響を及ぼすのとまったく同じように、人間の安寧と社会経済開発に影響を与えます。
人間の発展は今や、土地、水、森林、その他の天然資源の管理、そして大気、海洋、海洋生態系の管理と、密接に関連しています。
気候変動が進み、重要な環境サービスが劣化し、地球システムの重大な転換点を超える危険性があることを示す証拠がますます増えています。
これらの変化は人間社会にとって取り返しのつかない結果をもたらす可能性があります。
また、持続可能性に向けた進展はごくわずかであるという証拠もあります。
UNEPの『地球環境概況(GEO)5』は、さまざまな地域で、さまざまな部門で、また世界全体で、環境状態の評価を行い、持続可能性への移行は進んでいないと結論付けています。
90の指針のうち、大幅な改善を示しているのはわずか3つでした。
開発指標は多少の改善を示してはいますが、いまだに約10億人が貧困と飢餓の状態にあり、さらに多くの人々が自身の暮らしと健康、安寧に対する脅威が続いていると感じています。
ダボスでの世界経済フォーラムに先立って発表されたオックスファムの調査によると、1%の最富裕層が近々、残りの世界の人々よりも多くの富を所有することになるでしょう。
富裕層1%が世界の富に占める割合は、2009年の44%から昨年は48%まで増加し、2016年には50%を超えると予想されます。
このような不均衡に対処することは、より相関的で資源効率の良い世界を作るための重大な課題です。
リオ+20 会議では、世界の国々が未来の目標を設定するために環境と開発の指針を組み込んだSDGsの策定に合意し、環境管理や公正な開発のための選択肢や機会について論じ合いました。
グローバルな環境アジェンダの提案者にとっては、そのアジェンダを経済と社会のアジェンダに組み込み、一連の真に持続可能な開発目標を策定する歴史的な機会です。
国連システムの先頭に立つ環境機関であるUNEPと、その主要な討論の場であり意思決定機関であるUNEAは、重大な主導的役割を担っています。
国連総会のSDGsに関するオープン・ワーキング・グループは、17項目の目標と169項目のターゲットを提案しました。
提案されたSDGsは、環境を犠牲にして経済成長を続けることはできないという強いメッセージを発しています。
17項目すべての目標が持続可能性に重点を置き、目標のほぼ半分はUNEPの取り組みと環境アジェンダを補完するものです。これは疑いもなく、統合された持続可能な開発の環境面での大きな進歩です。
9月までの今後数カ月間、私たちは目標とターゲットの達成のために“どのように”SDGsの実行を成功させるか、集中的に議論しなければなりません。
実行の詳細な計画には、首尾一貫した監視・評価の枠組み、財源動員計画、そして現行の国や地域の取り組みを補完する戦略が必要です。
UNEPは、行動のための確かな場となる、首尾一貫した的確な監視・評価の枠組みの構築においてリーダーシップを発揮することができます。
進捗度を測る正確な測定システム がなければ、SDGsの重要性を損なう危険があります。
一方でUNEAは、総合的かつ普遍的なアプローチでSDGsに取り組み、私たちが望む未来へと移行するうえで責務を果たし続けていきます。
オヨーン・サンジャースレン:国連環境総会 (UNEA)議長、前モンゴル国 自然環境・グリーン開発大臣
出典:Wikipedia
Our Planet日本語版 2015 Vol.2(通巻39号)