貧困の撲滅は今日の世界が抱える最も大きな地球規模の課題であり、持続可能な開発のために欠くことのできない要素である。
男性と同じく、女性にも土地や天然資源の利用、所有、管理、相続の権利を保証することは、環境の持続可能性や経済成長、そして貧困の削減にプラスの効果がある。
女性や女児は、食物を育て、水や燃料を集め、家族の世話をするという仕事を伝統的に担っているため、彼女たちは天然資源や気候と密接に結び付いており、持続可能性の取り組みに変化をもたらす重要な主体となっている。
しかし同時に、環境問題の影響を受けやすい存在でもある。
したがって、女性が環境に関する意思決定や政策プロセスに参加することは、持続可能性を高めるうえで極めて重要なのである。
女性と女児の機会や社会参加を増やすためのさまざまな資源に投資が行われ、ミレニアム開発目標(MDGs)のすべての項目に進展が見られるようになった。
持続可能な開発目標(SDGs)案の中の「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つこと」(目標1)と「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図ること」(目標5)は、国連開発計画(UNDP)と国連環境計画(UNEP)の共同プログラムである「貧困・環境イ ニシアティブ(PEI)」の活動と切り離せない関係にある。
PEIは4つの地域――アフリカ、アジア太平洋、欧州と独立国家共同体(CIS)諸国、ラテンアメリカとカリブ諸国――の28カ国で活動しているが、環境、天然資源、気候政策、および予算編成にジェンダーの視点を取り入れるよう、各国政府の支援を求めている。
SDGsの実施状況を監視するため、各国は、たとえば所得、性別、年齢、人種、民族、および在留資格ごとに分類したデータを、より簡単に入手・利用できるようにする必要がある。
2014年にPEIはマラウィで、ジェンダー、環境、天然資源に関連したデータと経済指標の迅速評価を手伝った。
この評価により、女性の役割や環境と天然資源の利用機会についてのデータと経済指標が足りないことが明らかになった。
このような状況を是正するため、緊急措置を講じなければならない。
国連女性機関(UNウィメン)とPEIアフリカは、世界銀行と共に、マラウィ、タンザニア、ウガンダの農業生産性における男女格差のコストを評価する画期的な研究を行っている。
この研究は、男女格差の原因となるさまざまな要素を明らかにするだけでなく、過去のGDPや貧困削減の取り組みから、男女格差が農業生産性に与えた影響の見積もりを出そうとしている。
その結果を、よりジェンダーを考慮した農業政策や農業プログラムの策定に役立つ情報として提供し、それによって農業生産性を高めるだけでなく、貧困削減や食糧の確保など、農業に関連のある経済的・社会的利益を高めようというのである。
他にも、ルワンダではすでに、女性の土地所有権や相続権の向上によって、農業生産性と環境保護がどちらも改善していることが実証されている。
マリでは、PEIがジェンダーへの配慮を貧困環境政策や行動に盛り込むことについての委託研究を行った。
この研究により、マリの「2012-2017年国家開発計画」は、主要なすべての章でジェンダーを取り上げているにもかかわらず、健康や教育などの開発分野とは異なり、天然資源の分野には ジェンダーに的を絞った目標や予算がないことが浮き彫りになった。
ルワンダでは現在、女性中心の協同組合が、環境の持続可能性がもたらすメリットの実証を進めている。
カベザ村では、PEIルワンダとルワンダ環境管理局の支援によって、雨水貯留、バイオガスシステム、テラス栽培、さらには植樹まで、いくつもの技術が取り入れられている。
洪水や堆泥や肥料による汚染は減少し、食糧の確保や所得が改善され、住民が水やエネルギーを利用しやすくなった。
これらの技術の活用によって、村の住民の生活の質は改善し、環境の持続可能性が高まっている。
PEIは2015年に創立10周年を迎える。
Our Planet日本語版 2015 Vol.2(通巻39号)