韓 正
世界で最も人口の多い都市のひとつである上海が、いかにして輸送面で持続可能な開発に取り組んでいるか説明する。
都市では、人々が集まって物質面や文化面での急速かつ調和のとれた発展をめざし、天然資源やスペース、そしてさまざまな情報を効率よく効果的に利用しようとします。
また文明が融合し、発達するのも都市です。
発展を遂げる過程でさまざまな挑戦を果たし、問題に取り組みながら、都市はその魅力を失うことなく進歩し続けます。
都市部で最も重要なサービスのひとつに数えられる輸送は、経済的・社会的発展の中できわめて大切な役割を担っています。
上海は、中国国内で最も活力に満ちた都市のひとつとして、1992年以降、毎年10%以上のGDP成長を維持するという飛躍的な、しかし安定した経済成長を遂げてきました。
たゆまぬ努力の歳月を重ねながら、輸送手段の発展においても著しい成長の足跡を残してきたのです。
経済に新しい活力と生命力を吹き込む万国博覧会を2010年にひかえた上海は、それを機会にますますその環境の質を向上させ、都市の発展を加速させていくでしょう。
またそれと同時に、持続可能な開発にも取り組んでゆくことでしょう。
1990年以降、上海は、各種消費エネルギーの配分を最適な組み合わせにし、環境汚染の原因となっている産業施設を移転させ、石炭の燃焼による大気汚染を毎年削減していくようリードする第三の部門の育成に焦点をあててきました。
しかし、道路を走る車の数はあまりに増え、排気ガスによる大気汚染レベルは悪化の一途をたどっています。
過去10年以上にわたり、窒素酸化物の排出は年々増加していますし、2000年には、上海の繁華街における大気汚染の原因の70%以上が、この窒素酸化物であることが判明しました。
急速に進む開発に起因する輸送需要の増大にともなって、人と貨物の輸送システムや道路交通システムが行き詰ってきました。
1990年代半ばから、上海は交通渋滞という問題に直面していますが、社会経済の発展にしたがい、車の数は2010年までに200万台に達すると予測され、2020年には300万台以上になると言われています。
路上の車が今よりもさらに50%から140%増加した場合、上海の都市交通システムは、今まで以上に深刻な問題に直面することになります。
環境にやさしい開発
急速かつ安定した経済成長をさまたげることなく、調和のとれた社会的・経済的発展と、環境にやさしい開発を実現するため、上海市当局と内外の調査機関が協力して「上海都市交通白書」を草案しました。
これにより、立体的な都市交通システムを開発するという計画と、公共の交通機関の拡充を優先させるという方針を明らかにしたのです。
設備を整え、需要管理を改良し、政府の管理機構を再編することで、上海政府は白書の記載内容を実現させ、都市交通を現実的な方法で改善しようと努めています。
交通・輸送手段の改革と社会経済の発展、その両者のバランスを考慮した開発を支援し達成するための長期計画は、すでに作成されています。
中でも交通・輸送手段こそは、都市にとって重要なものであり、持続可能な経済発展を遂げる上では永遠の課題でしょう。
上海市は、持続可能な輸送手段を促進するための実行プランを検討しようと、国内外から専門家を招きました。
そして2003年の11月には、上海の持続可能な都市交通の指標について共同調査を開始するため、世界資源研究所交通環境センター(EMBARQ)とシェル基金の間で「上海持続可能輸送協力覚書」を取り交わしました。
また、白書に対する最初の修正案がまとめられたのも、上海市当局の手によるものでした。
持続可能な交通を包括的に評価するために、完全な指標システムを作り上げる過程で、さまざまな中間結果が成果として生まれています。
このようなシステムを確立すれば、上海の交通システムを数量的に分析し、合理的に評価することが容易になると期待されています。
その結果、私たちの政策はより実用的で的を射たものとなり、調和のとれた社会経済の発展につながるものとなるのです。
それは同時に、この美しい都市のいろいろな資源を保全し、環境を保護するとともに、上海市民に便利で安全かつ快適でクリーンな都会の交通手段を提供するために、効果的な役割を果たすことになるでしょう。
地球家族の一員として、上海は、私たちが暮らすこの美しく調和のとれた地球を維持する責任を、他の都市とともに担っていく決意でいます。
Han Zheng : 上海の市長