マリア・ムタガンバ
(Hon. Maria Mutagamba)
ウガンダ水担当国務大臣、アフリカ水閣僚会議議長
祖国ウガンダが、町と都市に生活用水と廃水処理の設備を確保することで、ミレニアム開発目標を達成しようとしていることについて語る。
ウガンダは、おおむね農村からなっていると言えますが、急速な都市化も進行しています。
都市部への人口の流入がもたらす結果のひとつとして、生活用水と廃水への対応がますます求められています。
この対応面での需要と供給のギャップは、都市部ではつねに広がる一方であり、そこでは水の供給、廃水の処理と衛生問題が、持続可能な開発と貧困の克服にとって不可欠なものとなっています。
貧困をなくす
水問題は、特に現状では、貧困の根絶と社会の福祉のために、政府が優先的に取り組む分野です。
政府は、公約である安全で清潔な水の供給と下水処理のための設備を広く行き渡らせるために、資金を導入しようとしています。
それには、家庭用の水供給のための配管設備や井戸掘り、湧水の保護、雨水の溜め池などの新たな工事や修復、ダムや谷への溜め池の造成、さらに、衛生管理を普及させることも含まれます。
この水問題を推進するには、以下のことが求められます。
● 水資源をしっかりと保全して、社会活動と経済活動のすべてに水を供給するために、調整・統合され、かつ持続可能な水資源管理ができるよう推進すること。
● 利用する者の管理責任と所有権に基づき、まずは都市居住者の80%に安全な給水と下水設備を手の届くものにし、そして2010年までにこれを100%に上げる開発を推進すること。
● 農業の近代化と、雨水に頼る土地で天候への依存度を低減するために、農作物への水供給の開発を推進すること。
都市部に安全な水が行き渡る範囲は、ここ数年のあいだで着実に増加しています。
自宅から比較的近くの水資源を利用できるようになった住民は、1986年当時で全体の10%以下だったのが、今日では65%となりました。
排水設備が整った家庭は、現在53%と推定されます。
このような積極的な動きは、ミレニアム開発目標の達成の助けにもなっています。
ウガンダ政府は過去何年にもわたり、給水と下水問題の改革に取り組んできました。
これは政府による貧困緩和政策と密接に関連しており、債務救済基金からの資金援助によるところが大きいのです。
政府は、着実かつ革新的な改革を主導することによって、そうした問題に取り組む部門のパートナーや民間の組織とのあいだに、高い信頼と合意を築くことができました。
この改革の目的は、都市部に効率的・効果的なサービスを提供することにあり、そのために、給水と下水問題を担当する分野を総合的に評価するとともに、農村と都市の関連分野も含めて、活動計画と投資のための準備がなされてきました。
政府が認定した、都市主導の計画を実現するための主要な戦略は、提供するサービスを中央集権型にしない、官民の連携を高める、その分野全体にわたる視点から計画を立てる、ということから成り立っています。
また、基本的なサービスを供給する上で、財源不足が開発の大きな支障になっているというのがウガンダ政府の認識です。
多額の投資
多額の資本が、過去十年間に集中して投資されました。
その結果、期待通りにサービスを行き渡らせることができ、現在のように、都市人口の65%が安全な水の供給を受け、下水施設を利用できるようになりました。
都市部での給水と廃水処理の関連分野では、1990年代に改革が始まり、民間企業の参入が増えるとともに、商業ベースのサービスも見られるようになりました。
官民の協力関係がうまく機能するためのカギとしては、公共機関が資産の所有権を保有し、サービスの提供は民間の運営とすることが肝要というのが定説です。
さらにこの改革は、公共サービス改革や政府の優先課題である貧困の緩和政策とも密接に連携しながら、前例はないものの、上述の定説通りのプロセスで進められているのです。
こうしたプロセスは、民間組織、外部の支援機関、そして政府が一体となることで質の高いものとなり、継続性や影響力を持ちます。
そしてその結果、各分野の利害関係者たちのあいだに真の協力体制と相互理解が生まれるようになりました。
それはまた、「ウガンダ・給水と廃水処理ネットワーク」のような政策擁護団体のネットワークを広げることに寄与するとともに、市民社会が水部門基金の使途を管理する役割を担うのが正当だとの見方が生まれました。
この改革が進行する中、給水と廃水処理分野の知名度も上がり、後援者の信頼が高まった結果、この4年間で基金は3倍にもなったのです。
同時に力を注いできたのは、全国で19の町にサービスを提供している国立上下水道公社(NWSC)を対象に、その事業内容と経営基盤を強化して収益のリスクを低減することでした。
政府とのあいだで取り交わされた事業契約のおかげで、NWSCは事業の質を向上させ、人員の削減、上下水道の引き込み率のアップ、そして2001年には200万米ドル(約2億円)の利益を上げることができました。
こうした改革にはまた、貧しい人たちのための要素も盛り込まれています。
たとえば、都市での水道を引く費用を下げて、貧しい家庭にも水道を行き渡らせるようにしました。
こうした活動のすべてが、特に都市部の貧しい家庭へのいろいろなサービス提供の改善に貢献したのです。
国際的な公約
もしウガンダが国内に向けて、また世界に向けて公約したことを成し遂げようとするなら、都市の行政支局にとっての課題はたくさんあり、投資家のすべてが力を合わせる必要があります。
おもな課題は以下の通りです。
1.ウガンダ水分野の改革に際しての公正と平等。
都市改革を実践するにあたって、民間組織と商業活動中心の会社が、かつて自治体が所有していた施設を引き継ぐことで、不正な利益所得がされないようにすること。
何よりも、有効かつ効果的なサービス体制を確立して持続するようにすること。
2.貧困層のニーズに継続した対応。
性能のすぐれた施設さえあれば、顧客に効率よく水を供給することはできるが、それだけではなく、貧困層の人々のニーズや、水の供給が最優先される農村・都市部およびその周辺地域に住む人々のニーズに適切に対応できるかどうかが大切である。
したがって本当の意味で挑戦といえるのは、貧困層の人々のための戦略が、その意図通りに達成されるよう改革を進めていくことである。
3.コストの回収。
政府の投資が続けられるように、内部の資金繰りを充分に円滑に行い、支出予定額に見合うようにすること。このコスト回収にあたっては、貧困層が水供給の実費を負担できる能力とは混同しないこと。
この回収すべきコストと貧困層の負担能力の両者のバランスをとることで、長期にわたって都市の給水分野への投資が持続されるよう、適切な料金体系と戦略を設定する。
4.都市の廃水処理と衛生。
水を売ることは、貧しい人々に対しても比較的簡単である。しかし廃水処理設備を売ることは、それが保健衛生面で公共の利益になるとわかっていても難しい。したがって、国民全体の意識を高めるキャンペーンが必須である。
過去においてこうしたことが軽視されてきたので、そのための資金も新たに必要になる。
多くの、そしてさまざまな課題が残っているのは確かですが、水をすべての都市に確保するという政府の未来図の実現に向けて、私たちは前進し続けます。
出典:OurPlanet 2005.Vol.01