7つの技術革新

1.伸縮自在な電子機器

巻き上げて収納できるテレビモニター、部屋を照らす壁紙、衣類にはめ込むビデオ・ディスプレイ。

このすべてを可能にしているのは、伸ばしたり曲げたりできるOLEDs ――有機発光ダイオード(organic lightemitting diodes)である。

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OLEDsは2つの伝導体の間で薄い層になっていて、電気が流れると発光する有機発光分子からできている。OLEDsは紙のように薄く、 液晶ディスプレイ(LCDs)と比べてエネルギー効率が良く、より質の高い画像を作り出せるので、すでに最高仕様のテレビモニター、広告、発光壁紙、電子機器に使用されている。

製造過程でのエネルギー集約度が低く、鉛や水銀のような有毒化学物質を使用しないので、発光ダイオード(LEDs)や蛍光灯よりも環境にやさしい生産が可能で、また生産コストも少なくてすむ。

研究者たちは現在より柔軟なOLEDsの作成に取り組んでいるが、成功すれば、人間の体組織に沿って自由に動き、伸び縮みするはめ込み式の生体医療機器など、可能性は無限に広がる。

2.キノコの死装束

われわれは、死んでのちもなお汚染を引き起こしている。

すなわち防腐処理には有毒化学物質が使用されるし、火葬には大量のエネルギーが必要だ。埋葬された遺体からでさえ、生涯にため込んだ毒素が環境に放出される。

マサチューセッツ工科大学 (MIT)を本拠にするアーティストでありデザイナーのJae Rhim Leeさんは、キノコ――有機物から油、ビニール、殺虫剤やその他の汚染物質まで、あらゆるものを分解する能力があることで知られている――を使って、遺体の処置をより環境にやさしいものにしたいと考えている。

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彼女は、分解の速度を速め、われわれの体に蓄積した毒素の無毒化を助ける菌糸体を埋め込んださまざまな死装束を試作しているのだ。

まだこの目的に最適なキノコは見つかっていないが、科学者たちの協力を得て、環境毒素を分解することが知られている種類のキノコを培養し、人体組織を食べる性質に適応させようとしている。

3.ペットボトルからレンガを作る

世界にはあまりにも多くのペットボトルがあり、その一方で、環境にやさしい建築資材は充分には手に入らない。

それゆえ、ここ10 年の間にペットボトルから作られたレンガがブームになったのは、驚くことではない。

ナイジェリアでは、砂を詰めたペットボトルをコンクリートの基礎の上に積み上げ、泥で固めている。また地震後のハイチでは、がれきやゴミを詰めて家を再建するのに使われている。

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泥や砂を詰めたペットボトルは、レンガより耐久性があると言われている。砕けにくいので衝撃荷重を吸収できるし、レンガやコンクリートを作るのに必要なエネルギーおよび材料を節約できる。

おそらく今後ボトル製造業者は、特に使用後のことを考えてボトルをデザインしたほうがいいかもしれない――1963年にビール醸造家アルフレッド・ハイネケン氏が、先見の明を持って、かみ合わせてレンガのように結合できるガラスのビール瓶World Bottle、略称WOBOを発売したように。これはたった6万本しか製造されず、今では珍しいコレクターズ・アイテムになっている。

4.書類が入り、トイレットペーパーが出る

われわれはオフィスで出る紙類をきちんとリサイクルし、再生トイレットペーパーを買っている。

ある日本の企業がその手間を省くべく、紙を粉々にし、水に溶かして、トイレットペーパーに変える機械を作った。

40枚の用紙から1個のトイレットペーパー・ロールができ、コストは約10セント―― 経費削減になるし、ゴミや輸送費を減らすこともできる。

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「White Goat(ホワイトゴート)」という名のこの機械の価格は10万ドルと高価なので、家庭や小規模なオフィスには不向きだが、次のような場所でその効率を発揮できるはずだ。

たとえば生徒たちが学期末のレポートをいくつかシュレッダーにかけ、ほぼ無料のトイレットペーパーを持って帰れたり、あるいは、大量の紙くずが出る大学や大きなオフィスなどである。そして機械の売れ行きが良ければ、価格は下がるに違いない。

5.プラスティック・ファンタスティック

プラスチックの廃棄物はどうすればよいだろう?

もちろん、生産量を減らすこともできるが、そのほかにリサイクルして燃料にすることもできる。

プラスチックは熱変性処理を加えれば油に戻るが、これまで、ほとんどの消費者にとってそれは手の届かないものだった。

最近、日本の発明家である伊東昭典(いとうあきのり)氏が、3種類の一般的なプラスチック――ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロスチレン――を油に変える、安全で使いやすい卓上装置を発明した。

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ブレスト(Blest) 社のこの装置はプラスチックを燃やさずに溶かし、油に変えるので、二酸化炭素や有毒ガスを排出しない。

1キロのプラスチックから1リットルの油が生成 され、そのまま発電機やストーブに使用できるし、精製してガソリンにすることもでき る。携帯できる装置なので、どこでもプラスチック廃棄物から油を生成できる。

プラスチックのごみが問題になっている国々で最も役立ち、汚染物質を貴重な燃料として再生利用する手助けになるだろう。

6.包装材を栽培する

持続可能な素材の開発企業エコベイティブ(Ecovative) 社は、石油を原料とする発泡スチロールやパーティクルボード、ボール紙などのすべての包装容器に取って代わる素材を、文字通り栽培している。

それは菌糸体――キノコの根からなる糸状の真菌網状組織――を利用したものだ。

種子の殻や植物の茎など価値の低い農業副産物に菌糸を植え付け、容器型に入れて、暗いところに置いておく。ちょうど1週間で、菌糸は原材料を消化し、製造過程によって異なるが、さまざまな構造と密度を持つ固い包装容器になる。

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一番の利点は、 耐用年数が過ぎると家で堆肥にできることだ。エコベイティブ社はさらにこの技術を開発して、衣類や科学装置その他のための、新しい素材への道を切り開こうとしている。

7.ペダルの力

タンザニアでは、小規模農家はトウモロコシの殻を取り除くために、従来通り手でむくか、あるいは賃借料を払って脱穀機を借りなければならない。

この問題解消の技術を探し求めて、社会企業家Jodie Wuさんは自転車に取り付け、ペダルをこいで脱穀する装置を開発した。

小規模農家が収穫シーズンのために通常の脱穀機に投資しても、それに見合うほど長期間その機械を使用しないことがわかり、彼女は多機能自転車に取り付けて、ペダルをこぐ力で作動する脱穀装置を設計したのである。

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Jodie は自転車搭載装置で新しい経済が開拓できればと期待している。脱穀装置や自転車搭載の携帯電話充電器を備えることで、若い企業家たちは新しいビジネスを始める手段を得ることができる。

収穫シーズン以外には、自転車をタクシーや配達サービスに利用できる。Jodie の Global Cycle Solutions社は、稲こき機など、さらに多くの自転車搭載装置を開発している。

TUNZA日本語版 2012 Vol.2(通巻28号)