エリザベス・ガトー
地域での意思決定に女性をもっと参加させることが、持続可能な環境を実現する鍵になる、と語る。
持続可能な環境を実現するための要因はたくさんありますが、都市を効率的に管理することは、ひときわ重要な位置を占めます。
「緑の街」というテーマで開催される世界環境デーでは、男女を問わず、各地の市長や議員が果たす中心的役割に焦点があてられるでしょう。
けれども長期的な視点で成功を収めるため、地域で意思決定を行う際に特に大切になってくるのは、女性の役割なのです。
世界的な組織である「都市・自治体連合」(UCLG)のメンバーは、地方自治体でより多くの女性が、男女平等と「ミレニアム開発目標」 (MDGs)の実現のために活躍できるよう、支援することを約束しています。
明らかな違い
当選する女性議員の数が増えることで、地方当局が下す決定に明らかな違いがあらわれつつあります。
そうした違いが引き金になって、環境の持続可能性とか男女平等のような問題を、政策にまで押し上げるために必要な風土と考え方の変革が育ちます。
女性を計画的に参入させていくことによって、地方自治体の活動に民主的基盤が増し、その効率と質が向上するのです。
女性の政治参加、男女平等の推進、MDGsの達成、これらのつながりは長いあいだ注目されないでいました。
世界中の貧困に苦しむコミュニティにおいて、女性が見せるリーダーシップは目標達成のために必要不可欠な力となります。
ですから、地方で意思決定に携わる女性の数を増やすことは、女性のみならず男性や子どもを含めたすべての人類にとって重要です。
UCLGは、選挙で選ばれた女性と一般の女性を結ぶ協力関係も支援しています。
ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんが行った活動は、女性による草の根運動がケニア国内でどんな影響を与えたかを明示しています。
草の根運動を行う女性グループと女性の市長・議員のあいだで、定期的な意見交換を行うという試みは、より多くの女性を政治に参加させるために、
また性別の差に配慮した政策を推進するために、世界中で通用する効果的な手段であることが明らかになりました。
ラテンアメリカやヨーロッパで見られるような女性議員のネットワークを通じて、国家あるいは地域単位で、また時には地球規模で意見交換を行うことが可能になり、
より安全な都市をめざすプログラムとか、女性の考えを反映させたより良い計画づくりなどがそうした取り組みで進められています。
UCLGの調査によると、世界各国の議員のうちの20%は女性です。
意思決定を行う際に最も多くの女性が参加する地域は、依然としてヨーロッパですが、たとえばラテンアメリカなどの他の地域で、その差は縮まりつつあります。
実際、ナミビアやウガンダなどアフリカ諸国では、女性の参加率は地域レベルで40%を超えており、今やヨーロッパの先進諸国と比肩しているのです。
男女平等ということ
持続可能な発展のために必要とされる男女平等のレベルに到達するには、まだ長い道のりが待ち受けています。
けれども、決め手となる行動を起こすチャンスがあることは確かです。
だからこそ、国連のミレニアムプロジェクト・タスクフォース(特別対策本部)は、女性がどれだけ地域の政治に参画して
いるかを、MDGsの達成の指標にするよう推奨しているのです。
多くの市長や議員たちが9月に行われる「国連ミレニアム・サミット」に参加を予定していますが、彼らはそこで、世界規模での変革をめざすリーダーとして認知され支援されるよう求めるはずです。
地方自治体は、MDGsを実行するのにそれぞれ独自のスタンスを持っていますが、もしMDGsを2015年までに達成しようとするならば、そうした取り組みが認められるに違いありません。
持続可能な環境の実現、そしてMDGsの達成には、地方政治への女性参加が増えることが有効だというより、まさにそれにかかっているのです。
選任された女性たちは、地域の、国の、そして世界の政治の姿勢に、目に見える実質的な違いを日々もたらしています。
都市部やコミュニティの中の女性市長や女性議員は、より持続可能で平等公正な社会への先導役を果たしているのです。
Elisabeth Gateau:UCLG事務総長
出典:Our Planet.2005.Vol.01